土砂降りの雨が・・・
二十歳のあの日、私は、二度目の留学を終え帰国したその人を、空港で出迎えている筈だった。朝から猛烈な雨で、タクシーを拾って行き先を告げると、空港への道は寸断されていた。
何度もタクシーを乗り換えたが、無駄だった。到着時刻は瞬く間に過ぎ、部屋に帰って一人で泣いた。縁とはこんなものかも知れない。憧れの人ではあったが、私には遠すぎる人でもあった。
今では、私の想いが恋心だったのかも定かではないが、或る日、その人の親友が突然訪ねてきて「迎えに行ってやって下さいませんか」と言われた時、即座に「必ず、参ります」と答えていた。
見送りに行った時は、傍らに婚約者が寄り添っていらしたのに、留学先からの手紙には何故か「婚約は解消しました」と書いてあり、何度目かの手紙には「嫁さんになってくれてもいいぞ」と書いてあった。
「迎えに来てくれると思ったのに・・・」と電話があったが、気持ちを上手く伝えきれぬまま、それぞれの道を歩き出した・・・。
去年の初め、偶然新聞でお顔を見た。強い意志を貫き「アジアの子供たちに教育の機会を」と立ち上げた活動は、各界の賛同を得て、二十数年目を迎えていた。あの頃のままの、凛とした眼差しに、これで良かったのだと素直に思える今の私がいた。
でも、もしもあの日、雨が降らなかったら・・・あなた、ごめんね。
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