一心不乱
お客さまはそう大した人数ではなかったのだが、大学関係の年配の女性が「わあぁ、これ、美味しそう!」と言ってオーダーされた。
四人のお客さまが二組。
いつものお昼時に比べれば、ずっと楽な人数である。
ところが、何かの歯車が咬み合わない日・・・・というのがあるようで、何故か材料が中途半端だったりする。
受けた以上は何とかきちんと仕上げてお出しするのが仕事だが、どれもこれも巧く行かない。まるで、誰かが故意に意地悪をしているみたいな・・・。
新鮮なお魚の煮付けは、大鍋の蓋を開けてみると、なんと、ガスが途中で消えてしまっているではないか!
夫は、二組目のオーダーをきちんと伝えないまま、何処かへ消えてしまった。
とうとう、サラダと、数品のお皿だけが出来上がったところで日が暮れ始めた。
女性のお客さまは「忙しいから」と帰り支度を始めた。
こんなに頑張っているのに、何故か見事に空回り・・・。
ガスは依然、思うような炎を上げようとしない。お隣を覘くと何故か芸者さんを挙げて庭で楽しげに餅つきをやっている。
妙に虚しく冷蔵庫を開けると、入れておいた食材が全部凍りついてしまっている・・・。情けないやら、申し訳ないやら、悔しいやら。
その時、鶯が鳴き始めた。
「ほ~ほけ・・きょろろ・けきよろろろけきょきょ・・きょきょ・・・ほ~ほけっ!」正しい鳴き方は知らないらしいが、めげずに鳴いている。
「くっくっく・・・」と笑って目が覚めた。
恐らく、披露宴で出された細やかなお料理の数々に刺激された夢だったかも知れないが、未だ幼い鶯くんが朝の目覚めを心地よいものに変えてくれた。
少し疲れてはいるが、本当に和やかで楽しい結婚式だった。
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